2025/07/04 11:30
北海道生活
北海道 宿根草の育て方|7月 “次の美しさ”につなげる作業
北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。
文・写真:高林 初さん(苫小牧市・観光庭園 イコロの森)
花・庭の美しさを維持する、花切り・間引き・除草など
夏本番の陽射しの中、「イコロの森」では色とりどりの宿根草が咲き誇っています。北海道でも近年は高温になる日が増えていますが、暑さで株が休んでしまうようなこともなく、華やかな装いのガーデンを見せてくれています。

「イコロの森」のドライガーデンでは、アネモネやバーバスカムが開花

左/エキナケアやヘリオプシスも開花して夏らしい花壇に 右/ゲラニウムもまだまだ元気

リグラリアの黄色い花穂も、緑の中で映えている
今月は「今咲いている花」を楽しみながら、次の美しさにつなげる作業が中心になります。ガーデニング初心者の方も、気軽にチャレンジしてみましょう。
◆花切り
花がらを整えて次の景色づくり
宿根草は種類によって花後の扱いが異なります。切り戻しの仕方で、次の開花や秋の景色に差が出てきます。大きく3つのタイプに分けてみましょう。
【 タイプ別 花切り 】
①繰り返し咲くタイプ
例:ケントランサス、スカビオサ、クナウティア、エキナケア、サルビア、ネペタなど
・咲き終わった花のすぐ下で切る。こまめに整えると次の花芽が育ちやすくなる。
・花数が多いネペタなどは、刈り込みバザミで全体を低めに揃えてもOK。

細かな花を多数付けるネペタは、刈り込みバザミで全体を低めに揃えてOK!
②咲き終わるタイプ
例:アルケミラ モリス、アキレギア、ベルゲニア、ムラサキセンダイハギ、シレネ、ホスタなど
・花茎は株元から切り取る。
・葉が付いた茎の場合は、完全に茶色く枯れるまでは葉のすぐ上で切るとよい。
③結実を楽しむタイプ
例:ギレニア、アスチルベ、エキナケア、アスクレピアス、モナルダ、ヘレニウム、ペンステモンなど
花後のシードヘッドも美しいので、好みに応じて残すのも楽しみ方の一つ。ただし、茶色い立ち枯れ姿が暑苦しく感じるときは、切り取って景観を整える。

アネモネ ウィルギニアナ、花後のシードヘッドも観賞価値は高い
◆花壇の除草
引き続きこまめに行おう!
夏は宿根草の株間から伸びる草丈の高い雑草が目立ちます。見つけ次第取り除きましょう。
【 除草のポイント 】
・土が湿っているときは根ごと抜きやすいので、雨上がりが作業しやすいタイミング。
・花が咲く前に抜いておくと、タネがこぼれにくく翌年も管理がラクになる。

株の間から出る雑草は見逃しがちだが、花が咲くと景観を損ねる。写真の雑草は背が高く伸び、今にも花を付けそうな状態
◆間引きと勢力調整
成長差が出る今がチャンス
今の時期は宿根草の成長の差がはっきりと見えてきます。来年の花壇のバランスを整えるためにも、旺盛すぎる種類を軽く間引くことも有効です。
【 間引きのポイント】
・少し混み合いすぎた場所は、秋の株分けを見越して間引く位置を検討。
・「ちょうどよい」よりやや控えめに整理しておくと、秋以降も美しいバランスを保てる。
◆球根類の花後の整理
アリウムやカマッシアなど、初夏の球根類は花が終わったら花茎を切ります。葉はしばらく残し、養分を球根に戻す役目を終えたら自然に枯れます。混み合ってきたと感じたら、葉が枯れるのを待って、掘り上げや分球、植え替えをします。

アリウムの球根。植えた年に比べると、ずいぶん小さくなっている
◆支柱は随時調整
成長に合わせた支柱立ても必要
春に支柱を立てた植物も、成長につれて不足が出てくることがあります。必要に応じて支柱を追加するなどして支えてあげましょう。花穂が倒れるようなら、花切りを行なって軽くしてあげるのも倒伏防止に効果的です。

支柱の道具
・背の高いユッカは―

背の高いユッカの花。倒れてしまったので支柱を施した
・倒れたアネモネは―

花穂が重くて倒れてしまっているアネモネ

咲き終わった花を切り取って軽くすると起き上がる。残りの花はシードヘッドを鑑賞するためそのまま残そう
・雨で倒れかかっている株は―

雨後に倒れかかったアムソニア(左)。水滴を払うだけで多少起き上がる(右)ので、癖がついてしまう前にやってみる価値あり
今月の観察ポイント
7月は、庭の賑わいを存分に楽しめる季節。観察しながら、来年に向けたアイデアも膨らませてみましょう。
【 チェックしてみよう! 】
◆いま、最も華やかな宿根草は?
例:エキナケア、モナルダ、ヘレニウム、リグラリアなど
・葉色が悪い、成長が悪い株はないか?
・秋や翌春に株分けや、移植をしたい場所はどこか?
成長の悪いもの、株分けしたい株、移植先などに印をつけておくと便利。
暑さの中でも風に揺れる宿根草の姿は、この時期ならではの美しさです。無理をせず、心地よく庭時間を楽しみながら、少しずつ作業を進めていきましょう。
プロフィール
高林 初
英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。
Instagram ikor_no_mori
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