2025/08/22 15:30
北海道生活
北海道 宿根草の育て方|8月 夏を乗り切るケアと秋へつなぐ準備
北海道のバラや宿根草、芝生や樹木、病害虫についてなど季節のお手入れ・管理をプロの皆さんが伝授。ここでは、「宿根草・草花」についてお伝えします。
文・写真:高林 初さん(苫小牧市・観光庭園 イコロの森)
イコロの森のガーデンでは真夏の陽射しの中でも、背の高い宿根草や大きな葉が特徴の宿根草が存在感を増し、落ち着いた美しさを保っています。
北海道でも、日中の暑さが厳しい日が増えています。今月のポイントは、「夏を乗り切るためのケア」と「秋へとつなぐ準備」です。

大型の宿根草と葉が特徴的な宿根草が存在感を増す季節

暑さに負けず咲き続けるペルシカリア

キキョウやオミナエシなどが夏から秋にかけて庭を彩る
夏の疲れを整えつつ、次の季節へ
宿根草の花後の処理は、株の負担を減らし、次の季節の姿をつくる大切な作業です。
◆タイプ別 花切りのポイント
・繰り返し咲くタイプ
(例:スカビオサ、クナウティア、エキナケア、サルビア、ネペタなど)
咲き終わった花を切り戻しながら、株を整えます。暑さで花数が減っていても、涼しくなれば再び咲き出すこともあります。

エキナケア:花切りをすることで咲き続けるが、よきタイミングで花切りをやめて、シードヘッドを秋の観賞用に残すとよい
・咲き終わるタイプ
(例:リクニス、フィリペンデュラ、アルケミラなど)
咲き終わった花がらは、真夏には少し暑苦しく感じますので状況によって花切りをします。

フィリペンデュラ:花後の姿を楽しむのもよし、立ち枯れた見た目が好みでない場合は切り去ってよい
・結実や立ち姿を楽しむタイプ
(例:エキナケア、アスクレピアス、モナルダ、ヘレニウム、アスチルベなど)
立ち枯れの風情が魅力なので、秋のガーデンに向けてタネの結実を残します。夏場は暑苦しく感じる場所や、頭が重く倒れがちなものを切り去って整えるのもおすすめです。

アスクレピアス:花がらを残しておくと秋にシードヘッドが楽しめる

アスクレピアスのシードヘッド
◆暑さ対策
北海道でも夏の高温とそれによる土壌の乾燥が年ごとに厳しくなっています。特に、植えたばかりの株や、暑さと乾燥が苦手な種類はよく観察して、適宜水やりを行ないましょう。
【 ポイント 】
・水やりをする場合は朝か夕方、涼しい時間帯にゆっくり、そしてたっぷりと。
・水やりは「土の中までしっかり湿ること」をイメージ。特に、土が乾いてしまうと水をはじきやすく、浸透するのに時間がかかるので、丁寧に行なう。
・地表の温度上昇と乾燥を防ぐため、マルチングが効果的。暑いうちは、今からでも間に合う。

花壇のマルチングは、地温の上昇や乾燥から守る効果があるのでおすすめ
◆湿気対策
近年は気温だけでなく、湿度の高さも気になるところ。蒸れやすい環境では、病気の原因にもなりやすいため注意が必要です。
【 ポイント 】
・株元に風が通るよう、込み入った葉や茎、倒れやすい茎を軽く整理。
・高温期は雑草もよく伸びるので、こまめに除草。
・密植している部分は、部分的に間引いて通気性を確保する。
・朝露や雨が降った後は、葉の表面が濡れたままにならないよう、軽く振って水を落としてあげるのも効果的。
◆株分けの準備
秋の株分け・移植を考えるタイミングです。夏の間に気になった株には印をつけておくと、作業がスムーズになります。実際の作業は9月頃に行なえるでしょう。
【チェックしておこう】
・花付きが悪い株や、茎や葉の出方に偏りのある株は株分けのサイン。
・混み合ってきた場所は、秋に株分けする候補として記録を。
◆支柱の見直し
雨や風でぐらついている植物はないか、今一度チェックを。夏の豪雨対策として、ゆるめの支柱や枝添えを加えるのも安心です。
倒れやすそうなものは、あらかじめ花切りや切り戻しをしておくのもよいでしょう。
今月の観察ポイント
8月は、暑さの中で宿根草たちがどんな表情を見せているのか観察してみます。気候変動が進む中、来年以降の夏の庭を彩るヒントが見つかるでしょう。
・暑さに負けずに華やかに咲く種類
(例:エキナケア、ヘレニウム、フロクスなど)

アリウム ’ミレニアム’は盛夏に開花
・涼しげな花色の花
(例:キキョウ、ホスタ、エウリビアなど)

アガパンサスの青い花は涼しげ

アスター ’トワイライト’の青花も暑さを和らげる

晩夏から開花するホワイトウッドアスターは日陰でもよくそだつ涼しげな花

レンゲショウマの浮遊感も夏の木陰で涼をかんじることができる
・葉が印象的な宿根草
(例:フウチソウ、ホスタ、グラス類など)

ダルメラの葉(写真の上方)は、大きく広がり存在感抜群。花は早春に咲いて葉が残る

アムソニア フブリクティやグラス類の葉は繊細で揺れる姿が心地よい
暑さのピークを迎える8月ですが、今年はこの暑さがまだまだ続きそうです。朝夕の涼しい時間を使って無理のないペースで作業を進め、日中は庭を眺めて心のリフレッシュを。
プロフィール
高林 初
英国Writtle College(リトルカレッジ)にてガーデンデザインを学ぶ。現在は、苫小牧市にある「イコロの森」の勤務、ヘッドガーデナー 。設計からメンテナンスまで庭づくりの幅広い経験をもとに、宿根草ガーデンの管理・栽培等を担当。
Instagram ikor_no_mori
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