2025/11/20 20:25
「北海道生活」編集長
美食と香りのレストランがオープン!「MORISHIRO(モリシロ)」に行ってきました
北海道発のコスメティックブランド「SHIRO」が、11月21日(金)に新しいレストラン「MORISHIRO(モリシロ)」をオープン!
森の恵みと香りを味わうレストラン――それがどんな内容なのか、一足先に行ってみました。
場所はJR砂川駅からシャトルバスで約10分、砂川市内の「みんなの工場」敷地内にあります。
円形の空間はSHIRO今井会長いわく「サーカス」のようで、使われている木は北海道の間伐材です。
中央には料理に使われる薪火台があり、キッチンはすべて丸見え。
オープンキッチンというのはありますが、ここは「開かれたレストラン」として、厨房はもちろん、ストックやごみ箱まで何でも見てOKにしています。
こだわりの薪火台では、くべる木の種類から皮の乾燥具合まで、今井社長や「TAKAO」高尾シェフが、木こりと徹底的に話し合って決めたもの。もちろんこれも間伐材で、森の都合で使われなくなったものです。
このレストランはオーナーとシェフ、ではなく、木こりやハンターなど、森のプロがチームとして加わっているところもユニークです。
壁は道北で見つけてきたという「北黄石(ほくおうせき)」。
北海道といえば札幌軟石ですが、北黄石という石は知りませんでした。
こういう知られざる素材を教えていただき、学びにもなるレストランです。
この北黄石はテーブルにも使われていて、10席限定となっています。
着席すると、カトラリーと、今朝切ってきたという白樺の台、そしてSHIROらしくコスメのようなものが置いてあります。
これは興部町(おこっぺちょう)のハマナスと芽室町(めむろちょう)のルバーブをブレンドした“食前用”のハンドクリーム。
SHIROでは販売していない、MORISHIROオリジナルの、食事をする人のためのハンドクリームです。
手に塗ってみると、ふわーっとさわやかな柑橘と花の香りが広がり、食事に合う香りを実感できます。
よく香水で行くと迷惑がかかるという飲食店はありますが、ここはSHIROのレストランだけあって、食事を盛り上げる香りを提供してくれるというわけです。
お水にもトドマツが入っていて、森の恵みのフルコースに期待が高まります。
1皿目: 日熊/椎茸
まず出てきたのは、枝の先に刺された大きな肉団子。森のビジュアル満載で松ぼっくりもあるので、最初は何かわからず、香ばしい匂いが立ち込めます。
シイタケ、三つ葉に、奈井江町で採れたタカキビ、その上にアツアツの肉団子がサーブされます。
これはなんと、ヒグマの肉のポルペッティ(イタリア風肉団子)なんだそうです。
いま世間を騒がせているヒグマですが、プロのハンターが仕留めて、血を抜いて、きちんと処理をしているので臭みは全くありません。
肉はミンチよりも大きめにゴロゴロしていて、レンコンがアクセントになっていて、とってもおいしい!
ヒグマってこんなにおいしいんだ!と驚かされるとともに、スタートがこんなに力強い素材になるとはとっても意外でした。
2皿目: 鰤/トマト麹/椴松
ここで、テーブルには香りの演出が。
柚子とトドマツ(椴松)のミストがパーッと吹きかけられます。
柚子とトドマツ……その香りがいっぱいに広がったところで、2皿目がサーブされるのです。
こちらに使われているのは、千歳で採れたトドマツのシロップと5年熟成のトマト麹。
香りを最大限楽しめるという、ブリのカルパッチョに使われています。
ブリのカルパッチョには、トドマツのシロップに漬けたパイナップル、グレープフルーツ、シソの実、おかひじきが加わり、甘みや酸味、さわやかな風味や食感でも楽しませてくれます。
近年の温暖化で、北海道で獲れすぎているというブリ。しかしサケやサンマに慣れている北海道民は、なかなかブリを食べてくれません。
この料理のブリはとっても幸せ者だなあと思うとともに、味わっていて幸せだなあも思わせるひと皿でした。
3皿目: 新得地鶏/星屑昆布/ルルロッソ
薪火でカリッと焼いた新得地鶏は、北海道では珍しい北海道産地鶏。十勝の新得町(しんとくちょう)で生産されています。
付け合わせの空心菜ともぴったりです。
その横にあるのはラーメンではなく、留萌市(るもいし)で誕生した超強力小麦粉「ルルロッソ」の手打パスタに、「星屑昆布」が練りこまれています。
「星屑昆布」は十勝の広尾町(ひろおちょう)で、屑として捨てられていた昆布を再利用しようとブランド化したもの。
素材を大切に、というSHIROの思いが現れるパスタです。
そのままでもおいしい新得地鶏を、一切れスープにひたして、ルルロッソのパスタとすすってみると、「これはうまい!」と感動。
地鶏の旨味とコクが、さらに奥までずーんと伝わりました。
4皿目: 蝦夷鹿
メインはエゾシカ。
エゾシカのローストといえば、脂身のない赤身肉でコクがあっておいしいですが、こだわりの薪火で焼いたエゾシカは、ひと味もふた味もちがいます。
このエゾシカも、MORISHIROのチームのハンターが愛別町(あいべつちょう)で仕留めたものなので、まちがいのない肉。
そこに、ビーツとハスカップのコンポート、シェリーと赤ワインのソースが味に深みを加え、口にしたとたん、「うんまっ!」と言ってしまいました。
もっとレベルの高い表現で発言したいところですが、本当においしいものを食べると「うまい」としか言えないのです。
そしてエゾシカもまた、北海道では増え過ぎてやっかい者の扱いですが、こうしておいしい料理でいただけることに感謝です。
5皿目: 米/黒千石豆
土鍋に炊きたての黒千石豆ごはんができあがりました!
「北海道生活」でも紹介しましたが、米は炊きたてが一番、ゲストのみなさんとシェアします。
お米は空知の米どころ・深川町(ふかがわちょう)産の「ななつぼし」。
北海道の在来種である「黒千石豆」は、生産の難しさから絶滅の危機に。北竜町(ほくりゅうちょう)や厚沢部町(あっさぶちょう)などの生産者さんの努力の甲斐あって復活した「幻の黒豆」です。
付け合わせには、興部町のハマナスで漬けたカブ、高知「矢野農園」のショウガを使った肉ゴボウ。
どちらもおいしくて、ごはんが進みます!
デザート: 蓬/柿
さて食後は、デザートの前に楽しい体験が待っていました。
MORISHIROのスタッフたちが摘んできたハーブを、ゲスト自らがブレンドしてつくるハーブティーです。
カモミール、ヨモギ、レモンバーム、といった想像もつくものから、カレンデュラ、バブエナ(モヒートミント)など……ティーバックに気になるハーブを詰めて、これはなかなか楽しい。
ティーバッグができたら、そこに、アイヌの人々が飲んでいるというナギナタコウジュ入りのお湯を注ぎます。
デザートは愛別町のヨモギを使ったシフォンケーキ。
数時間前に摘んだばかりのヨモギを使っているので香りがすごい!
SHIROでは「食べられるものは肌にもいい」をコンセプトに、これまでヨモギのスキンケアもつくってきました。
そうした素材を知っているからこそ、今回は逆に、肌にもいいものはおいしい!とうれしくなるデザートでした。
柿とホイップクリームのそばには、建物の裏にある「SHIRO農園」のほおずきも添えられていました。
生ごみをすきこんだ畑で農作物を作る循環型の農園ということで、最後の一皿まで素材に対する愛情がいっぱいのフルコースでした。
道産ワインを中心に充実のペアリング
MORISHIROのワインセラーには北海道のワイナリーから集めてきた道産ワインが揃っています。
なかなか珍しい品ぞろえもあり、一本ずつ飲んでみたいという誘惑に駆られてしまいました。
今回はペアリングコース(5本+砂川の地酒1本)から、料理に合わせたワイン3本をセレクトしていただきました。
乾杯にいただいたのは、余市町ドメーヌ・イチの「蝦夷泡2024」。
食用のナイヤガラ品種を使っていますが、瓶内二次発酵というシャンパーニュと同じ製法でつくられています。
無濾過でしっかりした旨みもあり、最初のヒグマの肉団子ともぴったり合いました。
ヒグマがいい肉だったので、スパイスでごまかさず、おだやかな味わいに仕上げられていたのと相乗効果があったように感じます。
ブリのカルパッチョといただいたのは、砂川市に新しくできたという「Grace du Ranch 東豊沼高橋農場」のソービニヨンブラン。
ハーブの香りが濃厚で、カルパッチョのパイナップルなどトロピカルな風味ともばっちり合うペアリングでした。
さらに、新得地鶏の薪火焼きともぴたっとはまり、食事と楽しめるおいしいテーブルワインと出会えてよかったです。
エゾシカの薪火焼きといただいたのは、余市町の平川ワイナリー「レスプリ2023」。
深味があってジューシーで、エゾシカの旨味をしっかりささえるミディアムボディ。
食べ終わった後も、ずっと「おいしい」の余韻がありました……。
香りと食の恵み・森――SHIROだからできる唯一無二のレストラン
ここで、MORISHIROを手がけたひとり、SHIRO会長の 今井浩恵さんにお話を聞きました。
最初からレストランを開くつもりではなかったそうですが、TAKAO高尾僚将さんと出会い、森に入り、そこで見たもの知ったこと出会った人の素晴らしいものすべてが、このレストランという形になっています。
森の都合で切られた間伐材を使った建物、ヒグマやシカなど人間の迷惑になっているもの、何一つ無駄なものはないと、このレストランを体験して気付かされます。
そしてSHIROならではの香りの体験は、「森の香り」と組み合わせることで、まるで森の中で食事をしているような非日常を味合わせてくれました。
札幌でレストランを営む「TAKAO」高尾僚将さんは、今井会長と旭川の同級生であることが偶然わかり、そこから交流が生まれ、このレストランについてもかけがえのない相棒に。
このレストランにはメインシェフがいません。
地方にはなかなかシェフのなり手がないという問題を、「それなら店でシェフを育てよう」という考えに変換。
若く意識の高いシェフに、高尾さんが作業工数を調整し、彼らが再現できる料理を生み出したと言います。
「TAKAO」でも森の食材、高尾さんならではの自然から得た北海道スパイスの料理は唯一無二ですが、このレストランも唯一無二魅力がありました。
二人の出会い、それは北こぶしの枝にもエピソードがあるのですが、それはまた別のお話。
このレストランは、味をどうこう説明するより、まずは行って、感じて、体験して、旅の思い出にできる場所。
ぜひ北海道の旅行の際には、砂川のMORISHIROに行ってみてくださいね!
(「北海道生活」編集長)
●関連ページ 北海道の森を味わうレストラン「MORISHIRO(モリシロ)」が11月21日OPEN
MORISHIRO(モリシロ)
住所/砂川市豊沼町54-1(SHIRO みんなの工場敷地内)
営業/金・土・日曜
12:00(ドアオープン11:45)~15:00
席数/10席
料金/6皿のコース 13,200円(税込)
※上記価格はサービス料込
※お子様用の食事のご用意はございません
