2025/08/28 11:30
北海道生活
北海道 移住インタビュー|伊達市で始めたセレクトショップ
北海道の“このまち”に来るまでと、まちに移り住んでからの“暮らし”について、移住定住インタビュー。今回は、伊達に移住して、セレクトショップをオープンした女性のお話。(本誌「北海道生活」 2024年3月3日発売・春号 掲載)
【伊達市】東北から入植した亘理伊達氏が開拓したことから名付けられた。北に有珠山、南はおだやかな内浦湾に面し、気候が比較的温暖。病院など施設がまとまっており移住に人気のまち。
広い家を求めて移住、セレクトショップの店長に。
藤田 晶子(ふじた あきこ)さん

セレクトショップ「everyday」店長の藤田 晶子さん。「この地域ににぎわいを取り戻せたら」と語る。
日々の暮らしに寄り添う、素敵なセレクトショップ。


伊達市の角地に建ち、2カ所の入口があるお店。もとはジーンズショップをリノベーションした。
JR伊達紋別駅から歩いて約9分、網代町商店街の入口に建つセレクトショップ。
この先は薬屋さん、眼鏡屋さん、飲食店など商店が軒をつらね、伊達市役所へと伸びていき、商店街の玄関口といったところです。

着心地のいい服や小物は、流行に左右されない飽きの来ないものをラインナップ。
広い店内にはセンスよく着心地のよさそうなウエアや小物、雑貨などがゆったりと並べられ、「セレクトショップというと敷居が高そうなイメージもあるので、日々の暮らしを楽しくできるような、そして、ちょっと贈り物にしても喜ばれそうな品物を揃えるようにしています」と店主の藤田晶子さん。
それまで「おしゃれな雑貨や服を買いに行きたい」というと札幌まで行かなければならなかったという、地元の若い女性からも厚い支持を受けているそうです。
広い家で子育てしたい、北海道の移住を決意。
藤田さんは京都出身、結婚して二人の子供を産み、三人目の出産を控えていましたが、ずっとこのまま京都で暮らしていくことに疑問を持ちます。
「ロケット鉛筆みたいな細い小さい部屋がつながっている狭い家だったから、もっと広い家でのびのびと子育てしながら暮らしたいと思いました」。
京都は“鰻の寝床”と呼ばれるほど間口が狭く奥行きの長い住宅が、区切られた中に建てられているのです。
アウトドアが好きな夫も、「自然豊かな場所で、自分で家を建ててみたい」と同意し、二人は移住を決意。
それぞれの思いが一致するところは北海道しかない、と物件探しをしては、そのまちを訪問する旅を繰り返すようになります。
洞爺湖の自然に惹かれるうち、その隣にある伊達市なら病院や学校など施設がコンパクトにまとまっていて、暮らすにはちょうどいいと決めたそうです。

「それでも友達からは、北海道?電気通っているの?と、まるで『北の国から』のイメージがつよかったんですよ」と笑う藤田さん。
「何もない大自然で暮らす気はなく、同じ生活費で京都よりも広い場所で暮らしたい、それがたまたま伊達市だったんです」。
まずは二地域居住で、新たにお店もオープン。
京都で看護師をしていたこともあり、どこでも仕事ができるというのも移住しやすかった一方で、「覚悟を決めて移住しようというよりは、京都と北海道の半々でいいかな」と二地域居住に。
ようやく古民家を見つけ、マンションで仮住まいしながらリノベーション、2016年に完成しました。そして伊達市の病院で第三子も出産、5人家族の新しい生活が始まります。
看護師の仕事をしながら、三人の子育てに追われ、日々忙しく過ごしていた藤田さん。
京都にいるときと同じ生活を変えてみたいと、アパレル関係の仕事をしていた夫の勧めで、2017年に市内の鹿島町で小さな婦人服店「ブンガ」をオープン。
2019年には現在の網代町に2店舗目となるセレクトショップ「エブリデイ」をオープンしました。

木のうつわなど、毎日の食事がちょっと楽しくなるキッチンウェアが充実。
もともとファッションや雑貨が好きだったことから、自ら仕入れや交渉を行なうようになり、店舗をさらに拡大。
お店のファンもでき、ニセコや洞爺方面からもお客さんが来るようになりました。
当初は北海道と京都を半々でと考えていた藤田さん夫妻ですが、「今では北海道の暮らしになじんでしまって、9対1くらいになってしまいました」。
夫もアパレルの仕事に加えて、伊達市で古民家をリノベーションし、販売する仕事を始めるようになりました。

下川町「フプの森」のエッセンシャルオイルなど、北海道の良品も並ぶ。
そうするうちに、伊達に移住をしてみたいと考える人からの相談も多く受けるようになりました。
「移住といってもいいことばかりじゃない。私も最初は関西のノリが通じなくて、地元の人とうまく付き合えなかった。でも店を大きくしていって、そのようすを周りで見ていてくれた人たちが、少しずつ心を開いてくれた。北海道の人ってシャイなだけで、いったん心を開いてくれるとこんなに優しいんだとわかりました。移住について実際どうなのか、興味のある方には惜しみなく教えています」と藤田さん。
今では、SNSでお店の情報を発信したり、イベントを企画したりと、この場所から様々な交流を生み出しています。
●everyday(エブリデイ)
住所/伊達市網代町27-6
アクセス/JR伊達紋別駅より徒歩約9分
営業時間/10:00~18:00
定休日/月曜
駐車場/あり(8台・無料)
カード利用/主なものOK