2023/11/06 12:05
北海道生活
北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む
(本誌「北海道生活」 2022年9月3日発売・秋号 掲載)
北海道の“このまち”に来るまでと、まちに移り住んでからの“暮らし”について、移住定住インタビュー。今回は、山間部のまち津別町(つべつちょう)にある、小さな焙煎珈琲店を営む夫婦のお話。
【津別町】オホーツク地域にある山間部のまち。女満別空港より約30分、JR北見駅・美幌駅よりそれぞれ30分。
vol.1 cafe 津別珈琲(カフェ つべつコーヒー)
樋田 繁文(ひだ しげふみ)さん・早苗(さなえ)さん
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/2f5100f3c2fa9bdc474532c31eb2fecb5156775f9269fac427b943801e8a1b8765377cf48bd70.jpg)
「cafe 津別珈琲を」を営む樋田 繁文さん・早苗さん夫婦
山間のまち津別町にある 小さな焙煎珈琲店
女満別空港より南へ車で約30分、森の中にある津別町(つべつちょう)は林業のまち。その中の小さな住宅地に、古い商店の建物があります。よく見ると「津別珈琲」という、ひときわ小さな看板が。うっかりすると見逃しそうな焙煎珈琲店は、茨城から移住してきた樋田さん夫妻が営んでいるのです。周りには通行人の姿もなく、すっかり人気のない場所。ここになぜ、お店を開くことになったのでしょうか。しかも、一人、また一人とお客さんがやってきます。
それはなぜ……。
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/8c7b0b194f78939c3ee75a038cef5c5b9d95e68e3a1480e91d6d48c9bf3f28bf65377cf48f108.jpg)
古い商店の建物を店舗に
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/78584151d170b4c5b377fdcd8dfd938c4360e866a9bc37efb21242751926645265377cf493390.jpg)
店内から見た入り口側の風景
コーヒーのまち茨城で カフェを夢見る日々
樋田 繁文さんは北見市の出身、津別町からは車で30分ほど離れています。学生時代は釧路市で過ごしますが、「津別町はいつも素通りしていて、何もないところだと思っていました」。
釣りが好きで、よく来ていた川が津別町内であったと知ったのは、ずいぶん後になってからだそうです。
大学卒業後は本州へ、茨城県で就職し、茨城出身の早苗さんと結婚。子どもにも恵まれ、40歳からは脱サラをし、夫婦で花屋さんを始めました。インターネットで販売するプリザーブドフラワーが人気で、忙しい日々を送る二人が共通して好きになったのはコーヒーの世界。「茨城はとても焙煎コーヒーが盛んなんです。カフェめぐりも好きで、いつか自分たちで店を持てたらなと思っていました」。ところが、繁文さんの親が要介護となり、長男として北見に戻らなければならなくなります。それなら、夢だったカフェを自分の故郷でオープンし、親の面倒を見ながら働こうと決意。18年続いた花屋さんをやめることにしました。
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/d6c82cb30c4e1c52db4853f334d3f41471fa2253c04fe13357fda112803a58cc65377cf495630.jpg)
樋田さんたちが茨城にいた頃つくっていたプリザーブドフラワー
親の介護で夢は現実に 夫婦で北海道へ移住
樋田さん夫妻が理想としていたのは、小さな古民家カフェ。くまなく北見市を探しますが、商業都市ならではの空き物件はビルの中が多く、思うように見つかりません。今度は地域を広げて、空き家バンクで空き物件を探すうち、見つけたのは農機具の販売修理をしていた「新山機械店」の古い建物。それは津別町にありました。不動産がないまちなので、まちづくり会社の協力を得て2020年の2月には話が決まりました。しかし、そのとき北海道はコロナ禍に見舞われてしまい、全国初の緊急事態宣言に。銀行の融資もキャンセルされ、計画はすべて白紙になってしまったのです。
自分たちの手で店づくり 人々の輪が広がる
「ここでカフェがやれるのは最後のチャンスかもしれない。自分たちでやるしかない」。樋田さん夫妻は夢をあきらめず、自分たちの力で店をつくることに。幸い茨城県の自宅はそのまま子どもたちが暮らすことになっていたので、茨城と津別町を往復しながら徐々にセルフリノベーションしていきました。「女満別空港から近いので、思ったより津別からの移動はラクでした」。
三人の子どもたちも次々と手伝いに訪れ、やがて、まちの人々も協力してくれるようになりました。「世間はコロナ禍で深刻でしたが、信じられないくらい近所の人たちがあたたかくて、歓迎してくれたんです」。一年かけて、こつこつとつくりあげていった店。カウンターにと一枚板をもらったり、使われなくなった家具や道具をもらったり、善意がカタチとなって店の一部になっていきました。
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/cec12908460c4639e944b9685e28310f3cdbd2c51d067cce570d644e7e1ccb3065377cf49973c.jpg)
店内の中央には薪ストーブ、その近くには焙煎機が置かれている。手づくりしたからこその、あたたかみのある空間
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吹き抜けから厨房を見下ろせる、2階の1名席
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/0006775900e9388cbe004eb1e5faf99544c5d269b93262140604b8d455148b8465377cf49e927.jpg)
2階の一部はリノベーション中。まだ途中段階の様子を見るのも楽しみの一つ
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店内の装飾も味わいの一つ
2021年7月にオープン、すると、店ができるまでSNSで見守っていた全国の人たちが少しずつ訪れるようになったのです。茨城出身の早苗さんも、「茨城に住んでいるときより、友達が訪ねてくれるようになって、もっと人間関係が近くなったと感じます」。
二人が腕を磨いた自家焙煎のスペシャルティコーヒーは、本格的な味わいが評判を呼んで、早苗さんの手づくりケーキとともに人気となりました。何もなかった小さなまち、ここにできた小さな焙煎珈琲店から、今では人の輪が大きく広がっているようです。
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/f10403d8f7ae88a12c9d60b1a769f493877100e236e34d208063589178d7623d65377cf4a3e7a.jpg)
スペシャルティコーヒーはおいしく淹(い)れるために2杯分を提供。その分ゆっくり味わい、時間とともにコーヒーの味の変化も楽しんでほしいという
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/4a437a06918b788abbe853dbe040ec3e78342ac1ce04b61c6e9be7f45a7fe54065377cf4a6550.jpg)
「津別はまち全体の時間の流れがゆっくりしていますね」と語る北見市出身の樋田繁文さん
![北海道 移住インタビュー|津別町で手づくりの“小さな焙煎珈琲店”を営む](https://sumahononakani.com/tjn/upload/img_reports/detail/8e1044693215db31e00cea5f443cfd28428ce611a69a7f34bffc60ee0c1803ce65377cf4a8a0f.jpg)
茨城出身の樋田早苗さんは「たった一人でこのまちに来たと思っていたら、意外と周りに同じ出身者がいて心づよかったです」と、人との距離は感じられないそうだ
cafe 津別珈琲
- 住所/北海道 網走郡津別町幸町 11
- 電話/080-6083-7233
- 営業時間/10:00~18:00(LO.17:00)
- 定休日/月、火、水 その他休業日/定休日が祝日の場合は翌木曜休み
- 駐車場/あり(無料・6台)